初荷と初売りの違い
お正月になると初荷のトラックがあちこちを走り回り
百貨店では初売りのセールが行われます。
初荷と初売りとは言葉として何かよく似ているような印象をうけます。
いったいどこが違うのでしょうか?
今回の記事においては、初荷と初売りの違いについて説明をいたします。
初荷とは?
初荷は、もともと正月2日に、酒屋・衣料品問屋などが使用人以外の人々も臨時で駆り集めて
商売物の在庫品を馬幌に満載して街中を走らせることでした。
そのような大がかりな行事は勢いのある問屋にしか
なかなかできることではありません。
自分たちの景気の良さをアピールすることで信頼性を高め
今日のマーケッティング心理学でいう
ジャンプワゴン効果によって顧客を増やすという狙いが初荷にはありました。
なお、料理屋の初荷とは、商売物のお酒の「こも被り」を積み上げて
店にはこれだけよい酒がふんだんに用意されていると誇示することです。
現代においては、初荷とは、一般に
年が明けて最初に工場や倉庫など物流拠点から販売店へ向けて
商品(製品)が出荷されることであると言われます。
今日では官公庁や多くの企業で業務が開始される1月4日に
新年の初出荷が行われることが多いです。
その際、昔は「初荷」と書かれた旗やのぼりをつけたトラックが走っていましたが
高速道路などでの安全性の点から、現在ではほとんどなくなっています。
初荷式の動画です。
初売りとは?
初売り(はつうり)とは、年が変わって最初に物を売り出すことを言います。近年は通常、小売店の初売りをさします。
通常の営業と異なり、その年1年間の運試しの意味合いをかねた
福袋が販売されることが多いです。

なお、福袋の存在から初売りには宗教的な意味合いはないのかと気にする
キリスト教徒の方もおられるそうですが
大丸呉服店(百貨店・大丸の前身)が
江戸時代に端切れ(裁断した後の残り布)などを袋詰めにして
初売りで販売したあたりが福袋の起源かと思われます。
特に、初売りに宗教的な意味合いはありません。
近年では、アメリカの百貨店でも「lucky bag」「mystery bag」
といった福袋を初売り際に売り出しています。
1980年代前半までは、官公庁の業務が開始される御用始の
1月4日以降に初売りを行う小売店が多かったのです。
しかし、現在は、年中無休で24時間営業のコンビニエンスストアや
ファーストフード店が増えていますので状況が異なります。
スーパーマーケットや専門店での元日の初売りも珍しくなくなり
現在ではそごうや西武といった百貨店の一部では元日初売りを行っています。
元日に休業するほとんどの小売店も
1月2日までに初売りを行うようになっています。
ファッションビルや百貨店などでは、近年初売りの後に
冬のバーゲンセールを行うケースも増え、店側は正月返上で準備に追われます。

初荷と初売りの違いは?
一般には、初荷を行う主体は問屋であり、初売りを行う主体は小売店であるとして主体の違いで区別する説明も可能かもしれません。
しかし、主体による区別であれば
料理屋の正月に店頭にお酒を積み上げることも初荷
と言うことを説明しきれなくなります。
また、問屋が主体であっても、小売店が向こうから買い付けに来る場合に
初売りということも説明できません。
統一的な説明を試みたいのでしたら
初荷には自分たちの営業の勢いをアピールする
という目的があることに着目するべきでしょう。
初荷はお正月の初売りに間に合わせることを目的とした出荷ではありません。
初荷にあわせて出荷するのでしたら
初売りと同じ1月2日に出荷しても間に合うものではないことは明らかです。
お正月に、自分たちの店名・社名の走った車両を走らせることで
自分たちの営業の勢いをアピールするのです。
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